【多治見市】ランチ文化・徹底深掘りコラム
土岐川が育んだ「うなぎ街道」と美濃焼の美意識。日本一の暑さを吹き飛ばす芳醇なタレと陶芸カフェ
岐阜県東濃地方の玄関口であり、陶磁器「美濃焼」の生産地として世界に名を馳せる多治見市。夏場の全国最高気温常連としても知られるこの街には、過酷な暑さを乗り切るためのスタミナ源として発達した「極上のうなぎ文化」、土岐川の清流を望む風情ある老舗割烹、そして若手陶芸家や職人が集まる洗練された美濃焼ギャラリーカフェまで、唯一無二のランチ文化が根付いています。
1. なぜ多治見は「うなぎの聖地」なのか? 窯元の歴史が生んだ極上スタミナ食
香ばしい炭火の煙が路地に漂う。外カリ・中フワの関西風地焼きが冴え渡る名店群
多治見の街を歩くと、どこからともなく食欲をそそる甘辛い醤油と炭火の香ばしい煙が漂ってきます。多治見市内にこれほど多くの名うなぎ店が密集している理由は、美濃焼の窯元たちの歴史と深く結びついています。
かつて昼夜を問わず1000度を超える高温の窯の前で重労働を行っていた陶工たちにとって、高タンパクで疲労回復効果の高い「うなぎ」は欠かすことのできない滋養強壮の源でした。窯元が職人たちをもてなし、体力をつけさせるためにうなぎを振る舞った習慣が、街全体に高いレベルの専門店を定着させたのです。
多治見のうなぎの特徴は、蒸さずに炭火で一気に焼き上げる「地焼き(じやき)」スタイル。皮目はパリッと香ばしく、身は驚くほどふっくらジューシー。そこに創業100年を超える老舗秘伝の濃厚なタレが絡み合い、炊き立てのご飯とともに口へ運ぶ瞬間は至福の極みです。昼休みやお祝いの席で、うな重やひつまぶしを頬張る時間は、多治見ならではの贅沢な文化です。
2. うながっぱとB級グルメ「たじみそ焼きそば」の挑戦
ピリ辛味噌のコクと半熟玉子が絡み合う、地元で愛される鉄板麺
多治見市のマスコットキャラクター「うながっぱ」(やなせたかし氏デザイン)に象徴されるように、街ぐるみで食と観光を盛り上げる取り組みが盛んです。その代表格が「たじみそ焼きそば」です。
たじみそ焼きそばの定義は明確で、「ピリ辛の特製味噌ダレを使用すること」「半熟玉子(目玉焼きまたは温泉玉子)を乗せること」「紅生姜を添えること」などが条件となっています。熱々の鉄板でジュージューと音を立てながら提供される麺は、赤味噌の深いコクとピリッとした辛味が麺にしっかりと絡み、途中で半熟の黄身を崩すことで驚くほどまろやかな味わいに変化します。
観光客だけでなく、地元の高校生やビジネスマンが日常の昼食として定食屋やお好み焼き店で注文する姿が日常的に見られます。リーズナブルでありながら圧倒的な満足度を誇る、多治見のランチの隠れた名物です。
3. 本町オリベストリートと美濃焼ギャラリーカフェの洗練された昼時間
明治・大正の蔵造りとモダンな陶器が調和する、心落ち着く隠れ家ランチ
土岐川の南側に広がる「本町オリベストリート」は、明治から昭和初期にかけて美濃焼の陶磁器問屋が軒を連ねた歴史ある通りです。古い蔵や商家をリノベーションした趣ある建物が並び、現在ではハイセンスなカフェやビストロ、ギャラリーが点在しています。
ここでは、作家が一つひとつ手作りした美濃焼の器に盛り付けられた「日替わりプレートランチ」や「自家製スパイスカレー」、「手打ちパスタ」などを楽しむことができます。器の手触りや釉薬の美しい発色を指先と目で楽しみながらいただく料理は、ただお腹を満たすだけでなく、豊かな気持ちにさせてくれます。
春日井や名古屋方面から川を越えてドライブがてら訪れる女性客やカップルも多く、日常の喧騒を離れてゆったりとした昼下がりを過ごすには最高のロケーションです。
4. 土岐川・庄内川を挟んだ愛知(春日井)との強い結びつき
県境を越えて日常的に行き交う「川向こうのランチ需要」
多治見市は岐阜県に属しながらも、愛知県春日井市や瀬戸市と極めて密接な生活圏を形成しています。JR中央線の快速を使えば高蔵寺や春日井、千種・名古屋駅へもダイレクトにアクセス可能であり、車でも国道19号線一本で結ばれています。
そのため、春日井側の工場やオフィスに勤める人が「今日の昼はちょっと足を伸ばして多治見のうなぎを食べに行こう」「多治見のあの町中華のから揚げ定食が食べたい」と土岐川・内津峠を越えてやってくる光景は日常茶飯事です。
逆に多治見の住民が春日井の大型ロードサイド店へ向かうことも多く、まさに「川のむこうのランチ街」という本サイトのコンセプトを最も象徴するエリアのひとつと言えます。